カルチャーを探求し、eスポーツをイケてる文化にする

大津勇人 Hayato Otsu

2017年入社 クライアントワーク事業部 プロデューサー

ウェルプレイド・ライゼスト(以下、WPRZT)で、プロデューサーを務める大津さんにインタビュー。「e-sports SQUARE」でのアルバイトをきっかけに入社し、現在はプロデューサーへ。これまでの経験を振り返りながら、eスポーツイベント制作におけるプロデューサーとは、いったいどのような仕事なのかについて聞いていきます。

「e-sports SQUARE」でのアルバイトを経て入社

――現在の仕事内容や、これまでの主な経歴を教えてください。

最初はアシスタントディレクターとして、2017年にRIZeSTへ入社しました。2018年にディレクターになり、2019年の終わり頃からプロデューサーをしています。

入社のきっかけは、秋葉原にあるRIZeST(現WPRZT)が運営するeスポーツ施設「e-sports SQUARE」でのアルバイトでした。音響やハイライト映像などの技術まわりを担当をしていたのですが、だんだん企画を提案する側に興味を持つようになって。

そんな時、現WPRZT代表の1人である古澤さんから、「制作をやってみるか」と声を掛けてもらったんです。二つ返事でやらせてくださいと伝え、そのタイミングで当時のRIZeSTに入社することになりました。

学生時代、アメリカでeスポーツの盛り上がりを肌で感じた

――どのようなきっかけで、eスポーツに興味を持つようになったのでしょうか。

学生の頃にアメリカで生活をしていた時期があり、その時に現地の友人がeスポーツに熱狂していたんです。それが2015年のことで、日本ではeスポーツという言葉がまだ浸透していない時期でした。

僕は中学生の頃、FPSゲームの『サドンアタック』にハマっていたのですが、当時はゲームにあまり良いイメージを持たれていませんでした。でも、そのゲームが今、eスポーツとしてこんなに盛り上がっているんだと、肌で感じたんです。

そんな風に、ゲームを肯定できる文化にしていきたい。そして、コンテンツを提供される側から、次は提供する側になりたい、と思うようになりました。

その翌年に日本へ帰ってきて、eスポーツの求人を探して見つけたのが、「e-sports SQUARE」のアルバイト募集。やりたいことが具体的にあったわけでもなく、とにかくeスポーツに関わりたいという気持ちで、地元の愛知県から東京まで出てきて、その面接を受けたのが始まりでした。

プロデューサーは、コミュニケーションが1番の仕事

――プロデューサーとは、どのような仕事か教えてください。

プロデューサーには「これが仕事です」という明確な答えがなく、伝えるのが難しいんですよね。社内にも何人かプロデューサーがいますが、人によってもまったくやり方が違います。

その中でも、プロデューサーとしての仕事の共通点を挙げるなら、お金や人員などのリソース管理をするところと、プロジェクトの総責任者になるところ。そして、クライアントさんの希望をどのように形にするか提案して作っていく、そのゼロからイチを生み出す段階を担うところかなと思っています。

――具体的な業務としては、例えばどのような内容がありますか?

クライアントさんやディレクターなど、社内外のさまざまな人とコミュニケーションを取ります。それから、企画提案や営業はもちろんのこと、チームに適切な人数の判断や、放送日から逆算したスケジュール管理など、全体のプロジェクトマネジメントも行います。

中でも、とにかく1番の仕事はコミュニケーションですね。社内にも社外にも、「今ここが困ってるから、こういう提案をしてみよう」とか、そういったコミュニケーションをひたすら取り続けています。

1日の業務のうち、平均して6割くらいは打ち合わせの時間。それだけでなく、社内で人を見つけて話したりすることも多いので、業務時間のほとんどを人と話して終わる日もありますね。

運命を変えた大会「PUBG JAPAN SERIES」での経験

――WPRZTに入って、特に印象的だった仕事を教えてください。

PC版『PUBG: BATTLEGROUNDS』の国内公式リーグとして、2018年2月から2020年12月にわたってDMM GAMES(合同会社EXNOA)が主催となり開催されていた「PUBG JAPAN SERIES」(以下、PJS)です。

これは僕の運命を変えた大会ですね。僕にとっては、初めて制作に関わらせてもらった大会でもあり、初めて責任者として携わらせてもらった大会でもあります。

それに、国内では前例がなかったバトルロイヤルというジャンルでの大会だったので、何をするにも初。オフラインで試合をするだけで、20チーム80名の選手が一堂に会することを含め、さまざまな初の試みに挑戦していくところもすごく好きでした。

――その中でも、特に記憶に残っているシーンを教えてください。

まず1つは、PJS αリーグが開幕した「闘会議2018」。あれだけの数の選手たちが集まって試合をしている場に立ち会えて、しかもたくさんのお客さんに注目されている光景を見て、心が震えました。

それから、PJSはファンの方々の盛り上がりを間近で見られる機会が多く、その1番のタイミングが、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルで開催された「PJS Winter Invitational 2019」でした。リングコールで有名な方に選手の入場コールをお願いして、約1000人のお客さんが一斉に沸く瞬間を見た時は、「eスポーツしてる!」と思いましたね(笑)。

そして、もう1つはPJSが終わった瞬間。現場はもう泣いていない人がいないくらいの状況で。なにより、演者さんからも選手からも、視聴者の方々からも、あんなに多くの人から「ありがとう」と言ってもらえる大会はないなと。自分が携わってきたPJSが、どれだけ評価されていたかを知れたタイミングでもありました。

原点にあるのは、ゲームが好きだという気持ち

――自身のどんな意識や経験が、今に繋がっていると思いますか。

突き詰めると、ゲームが好きだという気持ちだと思います。本当にゲームが好きで、だからこそ言えることがあって、それを評価してくださるクライアントさんや、社内の人たちがいたから、現在のプロデューサーという立場に繋がっています。

外から見たら、年齢的にも経歴的にも、僕がプロデューサーを名乗るにはまだ早いと思われると思うんですよ。でも、業務の範囲を超えて、自身がゲームをプレイしたり、いろんな配信を見たりして、その上で大会のことを24時間考えてきました。その自信が発言や行動に反映されて周りの方々に評価いただけたのだと思います。これを継続できているのは、やっぱりゲームが好きだという気持ちが原点にあるからだと思います。

eスポーツを”イケてる文化”にしていくために

――WPRZTでの仕事を通じて、今後どのような人になりたいですか?

僕がWPRZTでの仕事を通じて掲げているのは、「eスポーツ=イケてる文化」にすること。もともと広い世代でネガティブなイメージがあったカルチャーも若者の努力によってカッコいい文化、イケてる文化となっていくことがあります。それと同じような変化を、ゲームでも起こしたいと思っています。

そういう意味で、大会を見た人に「このタイトルよく知らないけど、なんかカッコいい」と思われるようなものを作りたいんですよ。そこから深く興味を持ってくれる人の母数が増えることで、eスポーツが文化になっていくと思っていて。

もちろんeスポーツ大会の放送として守るべきスタンダードがありながらも、思わず人に話したくなるような、イケてる文化にするための挑戦を続けていきたいです。その上で、「大津に任せておけば大丈夫」と期待してもらえる存在になりたいですね。

――それを実現するために、意識していることを教えてください。

eスポーツ以外のいろんなカルチャーを知って、その良さを取り込もうとしています。eスポーツ大会の放送では、ルール説明やチーム紹介があって試合が始まって……と、ある程度決まった流れがありますが、そのあり方も今後いろんな可能性があると思うんです。

例えば、音楽業界ならライブの合間はどうしているのか、アパレル業界ならブランドの価値をどう高めているのかとか。eスポーツの中だけを見ていると、どうしても自分の中にフィルターができてしまうので、幅広いカルチャーを知るために勉強しています。

求めるのは、自らコミュニケーションを取りにいける人

――WPRZTでともに働く仲間として、どのような人を求めていますか?

自分は一緒に動く人に、「鳴かぬなら 鳴かせてみよう ホトトギス」の豊臣秀吉になってほしい、という話をよくするんですよ。

仕事をしていて、コミュニケーションを取る機会が本当に多くあります。関わる人の課題をしっかりと見抜いて、手が届かないところをフォローする。話す力だけでなく聞く力も含めて、総合的なコミュニケーション力が求められます。

相談から生まれる良いものも今までたくさんあったし、PJSはまさにその塊でした。『PUBG』の試合もどれだけ見てきたかわかりませんが、1度も同じ試合はありません。なのに、僕ら作り手が「とりあえずこれでいいか」と考えるようになったら、終わりだと思うんですよね。

でも、この業界はただ待っているだけでは、できないことがとにかく多い。受け身になることなく、自分から情報を集めて、コミュニケーションを取りに行く必要があります。なので、まさに秀吉のような”コミュニケーション力”が、めちゃくちゃ強いと思っているんです。

どんな業界もそうですが、結局は人と人が繋がっていて、1人でアイデアを形にすることは絶対にできません。なので、そういうコミュニケーションが苦にならない人と、一緒に働きたいですね。