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インタビュー

「まちづくり×eスポーツ」の意義は“人のつながり”

「まちづくり×eスポーツ」の意義は“人のつながり”

泉佐野市の「eスポーツMICEコンテンツ実証事業」の事業受託者となり、「eスポーツ先進都市・泉佐野」の確立を目指した活動を行う南海電気鉄道とウェルプレイド・ライゼスト。2023年8月21日から3泊4日で開催する「eスポーツキャンプ 2023 Summer」の開催にあたり、南海電気鉄道 執行役員 経営戦略グループ eスポーツ事業部長 和田真治氏と、ウェルプレイド・ライゼスト 武藤一輝にお話を伺いました。


和田真治
南海電気鉄道株式会社 執行役員
経営戦略グループ eスポーツ事業部長

兵庫県出身。 1987年南海電気鉄道株式会社入社。経理、経営企画、グループ会社管理、M&A等の企画関連部門に従事。 2019年にソフトのまちづくりを所管する「グレーターなんば創造室」を設立し、室長として、道頓堀遊歩道の運営管理、なんば駅前広場化などの公共空間活用・エリアマネジメント、新今宮エリア活性化などを主導。 2021年よりイノベーション創造室副室長 新規事業部長として事業創造を通じた全社的なイノベーションを推進。 2022年より現職。eスポーツを通じた健全な青少年の育成と、地方創生に取り組んでいる。

武藤一輝
ウェルプレイド・ライゼスト株式会社
クライアントワーク事業部 プロデューサー

1987年生まれ。千葉県出身。新卒で入社したIT系企業に在籍中、サッカーに熱中。地元である千葉県で「個人でスタジアム集客に貢献するには?」をテーマに、オフラインイベントの開催や飲食店と連携した交流場をつくるなど、サッカーファンが集まれる場の創出を有志で実施。そんな時に「コミュニティ作りをゲームの世界でやってみないか?」と誘われ、2018年にウェルプレイド・ライゼストにプロデューサーとして入社。『#コンパス 【戦闘摂理解析システム】』のパートナーとしてウェルプレイドリーグを中心に、大会シーンやコミュニティ作りを行う。企画をゼロから作り上げることを得意とし、「eスポーツキャンプ」の企画・制作や、自社IPコンテンツ「COLORLESS」の立ち上げなど、ゲームを活用した新しい価値の創造に挑戦し続けている。


新規事業は「考えながら動き、動きながら考え続ける」こと

和田:南海電気鉄道(以下「南海電鉄」)とウェルプレイド・ライゼストの出会いは、大阪・難波でeスポーツイベントが開催された2019年でした。その後、南海電鉄が新規事業としてeスポーツ事業に参入し、eスタジアムの立ち上げを行ったのが2021年7月です。そもそも南海電鉄は創業時からまちづくりを行ってきた会社で、その一貫で南海ホークスや大阪球場の運営といった活動を行ってきました。私自身、eスタジアムの立ち上げ前は、まちづくりに5年ほど従事していたんです。eスポーツ事業を立ち上げ後、ウェルプレイド・ライゼストと情報交換を続ける中で、泉佐野市の「eスポーツMICEコンテンツ実証事業」の公募が発表されました。若い世代の間でトレンドとなっているeスポーツを活用したまちづくりに、我々が取り組まず誰がやるんだ、と。とはいえ我々はeスポーツのプロではない。そこで、eスポーツ業界で躍進し続けるウェルプレイド・ライゼストの力を借りて本気で取り組みを開始しました。

武藤:eスポーツは熟成しきっていない市場であるからこそ、ものすごいスピードで多種多様なサービスが生まれています。多くの自治体でもeスポーツを活用した施設やサービスが提供されている中で、様々な課題があることも事実です。それらの事実を並べた上で、「僕らにしかできないもの」を実現したいという話をさせてもらいました。

和田:まだ誰も実現したことがない世界に足を踏み入れるということは、考えながら行動に起こし、行動をしながら考えること。これぞ新規事業!という感覚でしたね。南海電鉄はeスポーツ業界にどっぷり浸かっていない企業だからこそ、フラットな立ち位置でいたいんです。自社の強みと長年続く企業であるからこそ得ることができた経験を生かしたいと考えました。大阪球場を建設し、運営したのも、人々に娯楽や夢、希望を提供することを大切にするというDNAが南海電鉄にはあるからなんです。

当時の大阪球場

「今流行っているeスポーツを活用したい」だけでは成せない、本当に必要な“本気度”。

武藤:企画段階で、泉佐野市の要件、南海電鉄のDNA、ウェルプレイド・ライゼストの強みといったことに加えて、時勢についても考えました。若い世代のゲームプレイヤーが増加していること、コロナ禍で学校行事が中止され続けていること。様々な点を繋ぎ考え続けた結果、「eスポーツキャンプだ!」となりましたよね。

和田:そもそも子どもの頃にスキー合宿等に参加して友達ができたといった原体験がそれぞれのメンバーにあったんですよね。そこで合宿をしようと。

武藤:さらに南海電鉄にはグループ会社に南海国際旅行という会社があります。合宿を行う上で、その強みを生かす手はないと。行政も企業も、それぞれが持つ強みや種をもっと上手く使えるし、使うべきだと思うんです。そのために僕らのような企画を考えて動かすプロフェッショナルがいます。でも、僕らだけが頑張っても、実現できないことも多いんです。
和田:行政と企業が手を組んでプロジェクトを進める際に重要なのは、“両者が本気であること”ですよね。つまり、そのプロジェクトに関わる人の熱量次第。互酬性が高い関係になることで、一枚岩になって動かすことが重要です。泉佐野市の職員の方々の熱量がとても高く、我々と肩を組んで動いていただくことができたからこそ、泉佐野市の「eスポーツMICEコンテンツ実証事業」の事業受託者となった約3カ月後には「eスポーツキャンプ」を実現することができました。

武藤:「eスポーツキャンプ」を開催しようと決定した後に、コロナの第7波が訪れてしまい、「本当に開催すべきなのか」という議論を何度も何度も重ねましたよね。

和田:ギリギリまで会話しましたね。でも、何もせずに諦めることはしたくなかった。コロナ禍で修学旅行といった学校行事が中止されているという状況の中、プレイヤーファーストとして学生のために徹底的にコロナ対策を行い中止にしないという話をしました。

武藤:PCR検査の陰性証明書提出、毎日の抗原検査、当初予定していた相部屋からシングルルームへの変更など、、安全に開催するためにできることは全てやろうと。それでも参加者の親御さんの大切なお子さんや参加者本人にとってコロナ禍での参加は勇気や覚悟が必要だったと思うんです。当時感じたのは、泉佐野市や南海電鉄がこれまでに積み重ねてきた信頼値も実現できた大きな理由の一つであること。ウェルプレイド・ライゼストが単体で開催していたら、結果は違ったかもしれません。泉佐野市や南海電鉄が本気で取り組んでくれたからこそ、参加者やその家族の皆さんも安心や信頼をしてくれたんだと思います。

和田:行政の課題意識は大切ですよね。「eスポーツを活用してなにかできないでしょうか」「eスポーツが今盛り上がっていると聞いたから良さそうだと思っています」と相談を受けることが多いですよね。でもそれだけだと何も変わらないんです。

武藤:信頼値、本気度、予算、強みなど多くの点が線に繋がったときにこそ、実現することができますよね。

和田:行政と企業の双方が本気になることで、ゲームを通した「体験コンテンツ」としての原体験を提供していきたいですね。

2022年8月に開催された「eスポーツキャンプ」で、
オフラインならではの勝利時のグータッチをする参加者の様子。

日本の将来を作る若者のために、環境を整えることが我々の使命。

和田:子どもたちにとって、大好きなものを大好きな人に認めてもらえることはとても大切なことだと思います。日本の将来を作っていく彼らが、やりたいことを楽しみながら実現していける世界、それを認めることができる社会、わくわくできる未来を作ることが私たちの使命だと考えています。eスポーツやゲームに対するイメージも随分変わってきましたが、健全なイメージを広げていくことでより活動しやすい環境を整えたいですね。そして、共感の輪を広げていきたい。そこに、泉佐野市、ウェルプレイド・ライゼストと組むこと、南海電鉄が関わる意味があると思うんです。

武藤:「まちづくり」を広義に捉えると「人のつながり」ことだと思うんです。人々のライフスタイルに対して何かを提供することを考えたときに、ゲームは、コミュニケーションツールとして優秀で、人を繋ぐ力が強い。そこの力を信じている泉佐野市と南海電鉄とともにプロジェクトを推進する意味がとてもあると、僕も信じています。

和田:興行としてのeスポーツシーンは華やかで目立ちますが、そこからじわっと世の中に広がっていくときに、より広がりやすいような架け橋としての役目を担っているイメージですよね。まちの人と話したことが理解に繋がり、それがアウトプットとしてイベントなどの形になり、まちのイメージやまちそのものになっていく。すべての根本は「人のつながり」じゃないですかね。ゲームを通したコミュニケーションもとても近いもの。だからこそ、eスポーツとまちづくりは相性がいいと信じています。

武藤:今年も8月に「eスポーツキャンプ 2023 Summer」を開催します。eスポーツキャンプで一番届けたいものは「人と関わる事」です。当たり前ですが、人は独りで生きていく事は出来なくて、誰かを助け、誰かに助けられて生きていきます。eスポーツキャンプではeスポーツという"コミュニケーションツール"によって他者と交流し、社会性や社交性を身につけていく事を主眼に置いています。昨年開催した際も多くの参加者が交流を深め、今回の参加希望者からも「人見知りを少しでも克服したい」といった声が寄せられています。eスポーツキャンプを通じて学生たちが大きく成長していく事を今年も期待しています。

和田:そうですね。以下に昨年のキャンプの動画をつけてますが、今回参加したいと思っているみなさんは、是非、親御さんにもこれを見ていただきたいですね。そして、このキャンプに参加いただき、合宿でのプレイを通じて、学校では築けない新しい仲間とのコミュニティ形成や自身の成長、そして自身の将来を考える機会になれば、最高の夏・体験になると思ってます。そういう機会を創出することこそ、まちづくりだと思っております。


「eスポーツキャンプ 2023 Summer」は8月21日(月)~24日(木)にかけて今年も開催されます。今しかないできない体験と思い出を、行政と企業の本気を体感しにいらしてください。

◆昨年のeスポーツキャンプの様子は以下からご覧いただけます。
 
https://www.youtube.com/watch?v=GbP3XzyFe0E
◆「eスポーツキャンプ 2023 Summer」への参加に関する詳細は以下をご確認ください。
 
https://www.nanka-e-tabi.com/special/esports/
◆「eスポーツキャンプ 2023 Summer」へ視察をご希望の行政および企業の方は、以下よりお問合せください。
 
https://e-stadium.jp/info/

取材・筆:ウェルプレイド・ライゼスト株式会社 広報室 広報室長 金田裕理